株式会社 真工社
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脱脂とは?

ーめっきでの脱脂方法と種類についてご紹介ー
めっきの密着を邪魔するものとして錆や酸化被膜のほかに油汚れがあります。

料理で使うサラダ油、機械部品に使用する潤滑油、手の脂などいろいろな油脂があります。

これらの油脂を取り除くことを「脱脂」と呼びます。めっきでは最初の工程とされており、非常に重要な部分です。

今回は「脱脂」についてご説明します。

 

●脱脂とは?


 脱脂とは素材自体に付着している油や膜を取り除く作業のことです。

 プラモデルを作られる方は経験があると思いますが、塗装をする際に塗装液がはじかれてしまうことがあります。

それは、「素材の表面に油や膜が付着している」ことが原因です。

 プラモデルなどプラスチックの表面の油や膜を取るには中性洗剤使用し、機械・自動車部品には専用のクリーナーやスプレーを使用します。

 例えば、車をお持ちで洗車にこだわる方はコーディング前に下地処理の一つとして脱脂を行います。

コーディングの仕上がりや効き目は下地が非常に重要となります。
下地をしっかりすることで長期間にわたって維持や効き目が期待できるからです。

●脱脂処理の必要性


  素材の表面にはバフ加工時の研磨剤・プレス加工で使用する潤滑油・防錆油・手の脂などが付着しています。

 「アブラ」については大まかに「動植物性油脂」と「鉱物性油脂」に分けることができます。

動植物性油脂はバターやサラダ油など動植物から抽出した油のことで、鉱物性油脂は灯油やグリスなど石油を原料として作られる油のことです。

 油の特性として水だけの洗浄では落とすことができません。洗剤や溶剤(脱脂剤)を使って溶かし、水に溶けやすいように形を変えて洗える状態にする必要があります。

 めっきや塗装は表面へ均一に被膜をつける作業ですので、ムラや油の跡がつかないように仕上げるためにも脱脂は非常に重要な工程です。
 めっきでは「前処理の仕上がりで6~7割の品質が決まる」と言われています。

素材には機械加工や素材の仕上がり時に使用した油脂や汚れなどの付着物がついていますので、そのままではキレイにめっきすることができません。

汚れや油脂が付着したままめっきをしてしまうとめっき剥がれや、シミ・光沢ムラ(めっきが白っぽくなってしまうこと)、めっきの輝きが不十分(光沢不良)、めっきに凹状の気泡跡(ピット)などが発生する恐れがあります。

 
 これまで脱脂処理の必要性を説明してきましたが、次にめっきにおける脱脂の種類についてご説明します。

●溶剤脱脂


 溶剤脱脂とは表面の油脂などの汚れを溶剤で溶かして除去する方法のことです。鉄・ステンレスなどにめっきをする際の脱脂工程で使用されています。

使用する溶剤については材質や安全性を考慮して決めていきます。主にトリクロルエチレン・テトラクロルエチレン・トリクロルエタンなどが使用されます。


これらの溶剤は引火性がない・毒性が弱い・油脂を落としやすい・金属を腐食させない点などが特徴であり溶剤として優秀な性能を持っています。

しかし、環境破壊の原因や水質汚濁法上の有害物質とされているため使用・処分が制限されています。そのため、界面活性剤や次項で説明するアルカリ脱脂などへ代替利用が始まっています。

●アルカリ脱脂


 アルカリ脱脂とはアルカリ性の薬品を含む液に浸漬させて汚れや油脂を除去する方法のことです。金属・プラスチック両素材の洗浄方法として広く用いられています。

アルカリ脱脂には加温が必要となり、液温が高いほど洗浄効果が高まります。したがって、煮沸脱脂・浸漬脱脂とも呼ばれます。

 脱脂では界面活性剤とアルカリ性の薬品(水酸化ナトリウム・炭酸ソーダなど)を使用します。

 

●電解脱脂


 電解脱脂とはアルカリ脱脂液の中で素材と電極板を対面させ、電流を流すことで油脂を除去する方法のことです。

電流が流れることで素材の表面からガスが発生し、その力で汚れが剥がれ落ちる仕組みです。

素材の種類や表面の状態により陰極電解と陽極電解を使い分けていきます。

電解脱脂はとても強力ですが、方法を誤ると不純物が付着したり、素材自体を荒らしたりする恐れがありますので注意が必要です。
 脱脂の方法については素材やどの程度まで脱脂を行いたいかによって異なってきます。
ここでは代表的な方法について説明をします。

●金属の脱脂


 金属素材への脱脂は溶剤脱脂・アルカリ脱脂・電解脱脂を組み合わせて行います。金属の部品は前加工での油脂や研磨剤が付着している場合があります。

そのため、めっき処理へ入る前に状態の均一化・次工程が汚れるのを防ぐために溶剤脱脂を行います。

また、溶剤脱脂は素材の汚れ度合いによって溶剤を使い分ける必要があります。

工程としては基本的に次の3つを行います。

①加熱した溶剤に素材を浸漬させる
②冷却された液で素材を冷やす 
③蒸気洗浄で素材表面の汚れが液化して水滴のように流れ落とす

※溶剤脱脂だけでは蒸気洗浄時に薄い油膜ができてしまう為、続けてアルカリ脱脂や電解脱脂をします。
 

●プラスチックの脱脂


 プラスチックへの脱脂はアルカリ脱脂を用います。

アルカリ性の薬品(水酸化ナトリウム・炭酸ソーダなど)に界面活性剤を加えた液を加温した状態で使います。

アルカリ脱脂をする時は下記の作用が出ます。

①けん化作用:動植物性油が石鹸のようになり、水に溶けやすいものに変化すること
②乳化作用:本来混ざらない水と油が混ざり合う性質に変化すること
③湿潤分散作用:素材の表面張力を弱め、均一に濡れている状態のこと

①~③が組み合わさることにより脱脂が行われます。

 前項で液温が高いほど洗浄効果が高まると述べましたが、高温すぎると素材が液から出
たときに表面が乾いてしまい、アルカリ成分が固まってしまう恐れがあるため、注意が必要です。
 

 

脱脂は聞きなれない言葉だと思いますが、実際は様々なところで使われている身近な処理になります。
 
特にめっきにおいて脱脂を含めた前処理は、品質や仕上がりに大きくかかわる重要な工程です。

素材そのものは何か?その素材に適した脱脂方法は何か?などを事前に知ることで正しいめっきを行うことができます。

今回は脱脂について説明しました。